上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

ぶしゃしゃん

 今日は、待ちに待っていた風呂釜交換の日である。
 物事は、一番悪い時に起きると言うが、正に、この風呂釜、その通りでした。
 前にも書いたが、真夏に風呂釜が故障するならば、水風呂でも、水シャワーでも可能だから、然したる不自由は感じないだろう。
 ところが、よくしたもので、この厳寒の時期に、風呂釜さん、壊れてくれました。
 さて、職人さんは、来るのが、早い。
 朝食後、書斎で一息ついていたら、もう参上である。
 来たのは、二人で、中年の工務店社長、年配の水道屋さん。
 工務店の社長は、前の古い釜を据え付ける時に、先代の社長と一緒に来た人だ。
 婿さんだと聞いた事がある。
 先代の社長は、もう82歳で、色んな病気で入院中との事だ。 
 その社長には、私が現役の時、公用で、よく、お世話になった。  
 傍らの年配の水道屋さん、随分と老けてるなと思ったら、何と私と、たった2歳違いであった。        
 同じ年代だから、思わず、世間話が弾んだ。
 古稀過ぎて、現場で現役で働いているのは、それも素晴らしき人生かなと思う。
 風呂釜は、前と同じ位の大きさだが、性能は、かなり向上していると言う。
 前の風呂釜も、スイッチを入れてから、15分位で風呂に入れたが、今度のは、もっと早いと言う。
 まあ、価格は高いが、老妻が、お風呂のスイッチを、よく入れ忘れるので、早く沸く方が良い。 
 風呂自体は、少し大きめの家族風呂である。
 まだ子供達が小さい時は、よく、一緒に風呂に入った。
 二人とも女の子だから、ずっと、一緒に入って居たかったが、そうは行かなかった。
 それで、今でも、はっきりと記憶している、懐かしい場面がある。
 それは、次女が2歳位の頃だった、と思う。
 すると、長女は、その時、11歳である。
 その晩、三人で、お風呂に入って居た。
 何か、おもちゃを湯船に入れて、遊んで居たのだと思う。
 そしたら、2歳の次女が、何か叫んだ。
「ぶしゃしゃん」 
「ぶしゃしゃん」
 私は、まだ喋り始めたばかりの、次女が何を言っているのか、全く見当も付かなかった。
 私と長女が、怪訝な顔をしているので、次女は、分からせようと、何度も、同じ言葉を繰り返した。
「ぶしゃしゃん」
 じっと耳を傾けていた長女は、やがて、小さな妹の言葉を解読した。
 妹の言葉を理解出来て嬉しかったのだろう、微笑みを浮かべながら、私に言った。
「ぶたよ、ぶたさん、と言ってるのよ」
 2歳の次女は、湯に浮かんでる玩具の絵を見て、これは、ぶたさんだ、と叫んで居たのである。
 何でも無い、ごく日常の場面なのだが、私には、どう言う訳か、今でも、忘れられない思い出である。
 でも、一番幸せな時間を、それと認識していなかった、自分が、そこに居たのです。
 それは、返す返す、とても残念な記憶です。
 また、何時か、娘達と、一緒に、お風呂に入る日が来たら、どんなにか、嬉しい事だろうか。
 さて、長女とは、かなり長く一緒にお風呂に入って居たと思う。
 でも、ある日、「毛が少し生えて来たよ」と言って見せてくれたのが、最後で、それからは、毛が恥ずかしかったのか、もう一緒には、入らなくなってしまいました。
 あれは、いつ頃だったのか、小学6年生の終わり位だったかもしれない。
 父としては、実に、寂しい一瞬であった。
 次女は、その奔放な性格に似合わず、かなり早い時期に、もう一緒に風呂に入らなくなってしまった。
 次女は、裸のまま、部屋を駆け回るような子だったから、ずっと、私と一緒に風呂に入ってくれるものと思って居た。
 でも、小学五年生位が、最後だったように思う。
 恐らく、友達との話で、「あたしは、もうお父さんとは入ってないよ」とか、聞いたせいだと思う。
 ところで、老妻だが、この家族風呂に一緒に入った記憶は、どう言う訳か、無い。
 大きな風呂だから、容積的には、一緒に入れたと思うが、子供を産んでから、老妻は、巨大になってしまったので、やはり、窮屈に感じたのかも知れない。
 一緒に入った記憶は、今、どうしても浮かんで来ない。
 勿論、若い時は、ホテル等で一緒に入った。
 思い出すと、今では、到底、信じられないが、片手で持ち上げた事もあった。
 それ位、老妻はスリムでした。
 えっ、今ですか?
 今だって、一応、筋トレしてるし、腕力は人一倍、あると思うけど、今、片手で持ち上げようとしたら、腕の骨が折れると思います。
 今日は、老妻は所用で出掛けています。
 なので、職人さんの対応は、私がやることになりました。
 いつもの事ながら、老妻は、陸上選手らしく、逃げ足が速いのです。
 さて、今夜は、久し振りに風呂に入れます。
 嬉しい事です。
 でも、やはり、もう一度、小さな娘達と入りたいなあ。


俳句


目の前の 幸せ知らず 愚か者