上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

散歩の効用

 先週は、郊外の公園まで散歩に行くのをやめて、近所を歩きました。
 と言うのは、やはり、時間が勿体ないと、思ったからです。
 まあ、公園まで片道、15分、それほどの距離でも無いのですが、やはり、何かしたい事があると、早く散歩を切り上げたい気になるのです。
 でも、一日一度は外の空気を吸う事と、30分は散歩する事は、健康維持のため、不可欠の事として、自らに課してあります。
 老人は、運動しなくなると、忽ち、劣化してしまう事は、以前も、よく経験しました。
 大体、半月程度、腕立てを休むと、もう以前の筋力は、すっかり失われています。
 若い時と違って、歳取ると、劣化が早いのです。
 なので、散歩は、外せません。
 それで、近所を散歩していたら、地区公民館の所に出ました。
 此処は、今まで、ごく偶に、公用で来る事がありましたが、殆ど訪れた事は無かったです。
 ふと見たら、開館中の札。
 なんと、此処に図書館がありました。市立図書館の分館です。
 中に入ると、外の寒風とは別世界、とても暖かかったです。
 分館ですから、本は多くないですが、何人かの老人が、静かに本を見てました。
 それに、受付のおばさんが、とても、親切に、初めての私に、システムを説明してくれました。
 そうか、こんな近くに図書館があったのか。
 ならば、本を借りてみるか、と、彼方此方の本棚を探索しました。
 室内をゆっくりと巡りながら、学生の時、よく彼女と待ち合わせした、大学の図書館を思い出し、懐かしさも感じました。
 読みたい本を探していると、奥の棚に、松本清張氏の本が、沢山、並んでいました。
 松本清張は、私からすれば、日本で最高の作家だと思ってます。    
 要するに、面白い小説を、的確に書いた作家と言う事です。
 小説は、娯楽、楽しみで読むものですから、面白く無いと、意味がありません。
 数学とか、物理の本とは、凡そ目的が違います。
 それで、二冊ほど借りて来ました。
 さて、黒い画集Ⅰの中に、「遭難」がありました。
 これは学生の時だったか、読んだ事がありました。
 改めて読み出しましたが、今回は、もう筋が分かっていますので、松本清張氏の推理小説の構成に関心を持ちました。  
 以前に、読んだ時は、ただ面白くて感心していましたが、視点を変えて読むと、また、別の感想が見えて来ました。
 即ち、トリックが不十分だなと思いました。
 トリックは、読者を十分に納得させるものでないと、小説の世界に浸る気になれません。
 折角、読者は小説空間に入りたい、と思っているのに、不自然な設定では、白けてしまいます。
 特に、不自然だなと感じたのは、主人公が、遭難させたい男Aに、浮気の事実を漏らして、その男を緊張させ、不眠にし、疲れさせる、と言う場面がありました。
 でも、そんな事をバラされて、その後、誰が、一緒に、登山に行きますか?
 険悪なムードで、登山に同行するのは、そもそも、無理です。
 登山に行くのは、気の合った、仲良し仲間と決まってます。
 それと、悪天候の中、相当に疲労している男Aが、前進を主張しますが、これも不自然。
 男Aは、なかなかの登山経験者ですから、悪天候の時に、山で退却する事の大切さは、十分過ぎるほど、よく知っている筈です。
 この二つの事項は、この小説の中核を為すものですから、この欠点に読者が、最初に、気付いてしまうと、この小説は成立しない筈です。
 ですが、初めて読むと、清張氏の素晴らしい筆力で、トリックに多少の欠陥はあるけれども、それをものともせず、読者をどんどん惹き込んでしまうのですね。
 小説は、部分に欠陥があっても、全体な印象が良ければ、それでいいと思います。
 ところで、この小説作成の動機ですが、南槍ヶ岳から冷小屋への下りの道が間違えやすい、と言う事に、清張氏は、ヒントを得たものと思われます。
 間違えやすいのであれば、それを利用しすれば、他人には、その行動が作為的とは思われない筈、ならば、これで、悪意を持った主人公の推理小説が書ける。
 そんな風に思ったのだと、推察します。
 山岳雑誌か何か見てて、小説の構想を、その様に得るのは、すごい事です。  
 ほんの日常的な事に、凄まじい想像力を加えての小説作りは、清張氏独特のものです。 
 清張氏の作品は、半分位は、読んだと思いますが、近くに図書館があると分かったので、今後、暇に任せて再読したいと思って居ます。
 ただ、「昭和史発掘」など、歴史的なものは、今は、もう、余り興味無いです。
 やはり、そこに、現代を生きる、生身の人間が書かれているものが、いいですね。
 さて、清張氏は、渡辺淳一氏のように、美しい女を余り書かないのは、残念です。
 まあ、推理小説ですから、どうしても、ギラギラと欲望に燃える女が多いのは、仕方ない事なのかも知れません。
 でも、これは、やはり、女性との実体験が少なかった故だと思われます。
 清張さんを見れば、うーん、これはモテなかったな、と、納得します。
 ともかく、女性だけは、想像力だけでは無理でしょう。
 やはり、多くの女性と付き合ってみなければ、彼女たちの生態は、容易に理解できるものではありません。
 それにしても、山岳に関する知識を、彼方此方に綿密に散りばめて、現実感を醸成して、読者を、主人公と、正に、一体化させる、氏の魔術には、脱帽の他は、ありません。
 清張氏には、スタッフがいて、細かな取材をさせたとは思いますが、清張氏ほど、沢山の精密なデータを駆使する小説は、他に、余り記憶が無いです。
 さて、当分、これで、細やかな楽しみが出来ました。
 あっ、それと、図書館の受付には、若い女の子も居たので、次回は、その子の方に、積極的に、お話をしたいと思っています。 
 暫く、あの図書館に通って、良い本を見つけて、読書したいと思います。
 人生、やはり、何か目的を持つと、楽しくなりますね。
 いえ、おばさんの方にも、それなりに、ちゃんと気を配りますから、大丈夫です。


 


俳句


受付も 若い女で 楽しみだ