上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

鉄塔の上で

 一昨日、風呂釜が、とうとう故障した。
 もう随分と長く使っていた物だ。正確な年数は、分からないが、15年以上にはなると思う。
 実は、その数日前、老妻が飛んで来て、「風呂が故障した」と言った。
 それで、長年使って来たから、これは、もう機械的耐久力の限界だな、と思った。
 とは言え、物は試しと、私がスイッチを押したら、何と、お湯が出て来た。
「あのね、押し方が悪かったから、点火しなかったんだよ」と、優越感に浸る私。
 老妻は黙って聞いていたが、極めて不満顔であった。
 スイッチの押し方に、上手も下手も無いだろう、と、言いたげな顔つきだった。
 それで、一昨日である。
「また、点火しないよ」と、老妻。
 これは本当に壊れたな、と、内心思ったが、もしやと思い、押してみた。
 点火しない。もう本当に壊れたようだ。
「これは、とうとう壊れたな」
「やはり、壊れていたのね、だから、あたしの押し方のせいじゃあ無いよね」
「うん、そう言う事になるかな」と、認めざるを得ない私。
 すごく嬉しそうな老妻の表情、まるで、100メートル競走に勝ったみたいだった。
 嬉しがる気持ちは、よく分かった。
 私にスイッチの押し方が悪いなんて言われ、濡れ衣を着せられ、内心、怒り狂っていたに違いない。 
 それにしても、だ。
 こんな酷寒の時期に、何で風呂釜が故障するのだ。
 そのタイミングが最悪である。
 ただ、シャワーの方は、お湯が出るので、来週の火曜日まで、シャワーで済ます事にした。
 ところが、この時期、やってみると、やはり、シャワーは駄目だった。
 いくら熱い、お湯でシャワーしても、身体がよく温まらないから、私は、湯冷めしてしまうのだ。
 もう二日間も、湯冷めである。
 ベッドに入ると、身体が温まらず、風邪のように汗ばんで来るから、熟睡も出来ない。
 仕方ないから、今日からは、もう、シャワーは浴びないつもりだ。
 このままだと、本当に風邪を引いてしまうだろう。  
 火曜日の工事まで、3日間あるが、3日位、風呂もシャワーも、無くて平気。
 子どもの頃を思えば、風呂は、1週間に一度だったのだ。    
 それにしても、最悪だ。
 これが、もし、真夏に壊れたのであれば、湯冷めもせず、それに冷水シャワーでも、全く、問題無かった。
 余りのタイミングの悪さに腹を立てていたら、過去の、最悪の思い出が、幾つか、蘇って来た。
 あれは、もう35年以上も、前の事だが、高さ16メートルの鉄塔に、巨大な、21メガの五エレ八木アンテナ、ブームの長さが12m位、を取り付けている時だった。
 勿論、私一人で、やって居た。
 その頃、近くにアンテナ業者は居なかった。また、友人は、誰一人、高所作業を引き受けてくれなかった。
 さて、アンテナをロープで仮付けしておいて、いよいよ、高張力ボルトで本締めをする事になった。
 16mの鉄塔に上がるのは、電気工事士でも無い、タダの素人である私とすると、なかなか大変な事である。
 必要な工具を揃えて、安全ベルトに身を託し、慎重に登って、鉄塔頂部に到達した。
 さて、本締めするぞと、腰の工具袋を探ったが、何と、その時、13ミリのラチェットレンチが、いくら探しても見つからない。
 信じられない事だが、用意してあったレンチを入れ忘れたのだ。
 他の工具もあったから、それらに気を取られていたのだろう。
 また地面に降りて、また、16mを登ってくる事を考えると、もう気が遠くなったものだ。
 そう簡単には、登り下りは出来ないのである。
 それは、高所作業だと、すごい恐怖感が伴い、その行動は敏捷とはならず、加えて疲労感が倍加するからである。 
 暫くは、絶望感と悲しみで、動けなかった事を覚えています。
 えっ、そんな時に、悲しみなんか感じるかって?
 ええ、正に悲しみでしたね、あれは。
 諸氏も、16mの鉄塔に上がってみれば、よく分かると思いますよ。
 それにしても、よくもまあ、若かったとは言え、16mの鉄塔に登ったもんです。
 今は、もう、見上げるだけで、溜息が出ます。とても登れません。
 最終的に、どうしたかって?
 ですから、降りて、また登ったのです。他に方法は、無かったですから。
 さて、学生の時、好きな女の子を、やっと連れ出して、校庭の端で、懸命に口説いていました。
 もう少しで何とか、なりそうだと思ったら、急に、腹痛に襲われました。
 我慢していましたが、どうも、下痢のようです。
 となると、これは、もう我慢は不可能。
 口説きながら、汗も少し出て来て、息は、ハアハアとなりました。
 でも、もう少しなのに、でも、仕方ない。
 とうとう、諦めました。
「じゃあ、ちょっと、用があるんで、またね」
 それでも、自然な笑顔を作って、私は、出ないように気をつけながら、キャンパスを走り抜けました。
 あんな苦しい疾走は、生まれて初めてでした。
 速く走りたかったけど、腹に力を入れると、出そうでしたから。  
 えっ、それで、どうなったか、ですか? 
 駄目でしたね。
 大体、去り方が少しもロマンチックで無かったですから。
 女の子も、きっと、私の態度から、それと察知したと思います。
 恋の場面に、ウンコのムードは、最悪、そのものです。
 ウンコと言えば、子どもの頃、トイレに入ってから、新聞紙が無い事に気付き、よく、大声で、毎回のように、母親を呼んでました。
「母ちゃん、紙、紙」
これは、トイレする前に、紙があるかどうか、確かめればいいんですが、小さな子どもだから、そんな事すら、しなかったんです。
 タイミングは、確かに、悪いけれど、母親が飛んで来てくれましたから、何でも無かったです。
 念のためですが、新聞紙は読んでいたのでは無くて、それでお尻を拭いていたのです。
 昔は、新聞紙を四角に切って、それで、拭いたのです。
 ですから、尻の穴が痛くなったり、お尻が印刷インキで真っ黒になったものです。
 もう、この歴史的事実、年配の方しか、ご存知ない事でしょうね。
 さて、この風呂釜ですが、40年位前に新築した時、最初の風呂釜を据え付けました。
 ところが、信じられない風呂釜でした。
 何と、リモコン付きと言ったのに、そのリモコンは、外の壁に付いていました。
 何とも呆れた業者でした。
 リモコンでは無くて、単なる操作盤でした。
 ですから、暫くは、外に行って、操作してましたが、とても、我慢出来ず、当たり前ですが、クレームを付けて、浴室から操作出来る風呂釜に変えてもらいました。 
 それにしても、今まで不自由なく使っていた物が壊れると、それは、何でもそうだと思いますが、不便、この上ないです。
 ふと、思いました。
 将来、老妻が壊れたら、どうしようか。
 もう、新しいのと交換する気は、無い、無い、です。
 ですから、老妻よりも早く、あの世に逝く事が、私にとって、最重要事項なのです。


<他にタイミングが悪かった事ってありましたか?>
<うーん、彼女を部屋に呼んだ時、生憎、ゴムが無かった時かな>
<で、どうしたんですか?>
<前進か、後退か、随分迷ったけど、若かったから、構わず前進>
<その後、大丈夫だったんですか?> 
<彼女の運が良かったんだ。生理前でさ> 


俳句


裸にて リモコン操作 蚊に刺され