上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

欄干下

 何かの折りに、蒸気機関車の写真などを見ると、大変懐かしい。
   今は、SL=a  steam   locomotive と、呼んでますが。
 と言うのは、私の実家が国鉄の線路から、百メートル位のとこにあり、子どもの頃から、もう毎日、飽きるほど、蒸気機関車を見ていたからです。
 確かに、青空の下、黒煙、白煙を噴出しながら走る姿は、長閑な一幅の絵でしたね。
 更に、夜だと、夜汽車の動く灯りは、まさに神秘的。
 あの汽車は、どこに行くのかな、自分も、あの汽車に乗りたいなあと、子供心に、いつも思っていました。
 今でも、覚えている俳句がある。 
 「月の影 汽車の煙に 揺らぐかな」
 この句が、ある雑誌の俳句欄で、優秀賞になっていた。
 選者評は、確か、「煌煌たる月夜。その月が汽車の煙で、一瞬、揺らいだかのように見えたと言うのである。作者の鋭敏な感覚が偲ばれる」であった。
 しかし、もはや、蒸気機関車の走っていない現在、この句の情景を思い浮かべることは、多くの人に取って困難な事だろう。
 ところで、線路に近い場所に住んでいたので、子どもの頃は、自然と線路に関係した遊びをしてた。
 その一つは、線路に釘を置くこと。今、思うと危なかったね。
 汽車が通過すると、釘は、当たり前だが、ペッチャンコになった。それが面白くて、何度もやった。平らにした釘を何かに使う事は無かった。 
 それと、幅10メートル位の川に欄干がかかっていたから、その下に潜り込んだ。
 そうして、汽車が、頭上を通過するのを待つ訳です。
 怖いもの見たさですね。で、通過する汽車の轟音で泣き出す子も居た。
 あとは、線路には石が沢山敷かれているから、石英系の石も、少しあった。
 その石を二個探して、ぶつける。すると、大きな火花が散るんです。
 これは火打ち石ですね。
 綿などがあれば、火が点いたと思うが、そこまではやった事は無かった。
 夜などは、花火のように大きく火花が散った。今でも、石があれば、やってみたいと思う。
 子どもは、育った場所に応じて、遊びを考えるんですね。
 でも、線路は、やはり、危険な場所でもありました。
 小学生の頃、列車事故があり、轢断死体を何度も見たことがある。死体ではなくて、挽肉が辺りに散らばっていると言うのが、正直な感想です。
 小三の時、算盤塾の帰り、踏切で止まっていたら、すぐ前で、飛び込み自殺に遭遇したこともある。
 近所のお母さんが家庭内トラブルで、遺書を抱いて飛び込んだ事件もありました。
 戦後、まもなくの頃は、混乱の世の中だったから、列車の飛び込み自殺は多かったように思う。
 ところで、今でも蒸気機関車が、観光用に走っている所があるらしい。
 それで、また乗りたいかと言われれば、「いや、もう結構です」と言うのが、本音である。
 子どもの頃、上野まで行くのに、三時間近くかかった。
 そうすると、燃えがらの炭が、汽車の中に吹き込んで来て、全身が炭で汚れてしまう。
 特に、昔の長かった清水トンネル通過などは、もう息が出来ない位だった。黒煙が座席まで入って来て、辺りが暗くなった。
 だから、東京に日帰りした時は、帰宅すると、全身が真っ黒であった。耳や鼻の穴もだ。
 それと、線路脇に住んでいたから、窓や洗濯物は、飛んで来た炭で汚れるのが始終だった。
 まあ、見た分には絵になるけど、蒸気機関車は、実は、ひどい公害をまき散らして走っていた訳です。
 しかし、当時の汽車には、燃えがらの炭よりも、更にひどい事があった。
 それは、トイレ。
 昔の汽車は、それは電車も同じでしたが、トイレで出したものを、そのまま、走りながら、ばらまいて線路に捨てていたのです。
 これは、ほんとに信じられないことだが、事実です。
 ウンコもションベンも、そのまま、すぐに、線路に、振り蒔いていたのだ。
 従って、子どもの頃、線路近くの川で魚取りをしていると、黄色い煙に遭遇することもあった。
 だから、線路作業員は、列車が来ると、出来るだけ遠くに逃げたのです。 
 また、昔は、空調が無かったから、夏、汽車の窓を開けるしかなかった。
 すると、白い半袖シャツに、小さな黄色のシミがつくことが、よくあった。
 だから、事情に詳しい人は、駅弁などは、間違っても、食べなかった筈です。
 事情を知らない人は、駅弁を買い、これはすごく美味しいな、でも、どこか独特の味もするなあ、と思った事でしょう。
 これが、くみ取り式になったのは、先進国の日本で1960年辺りからでしょうか。でも、世界的には、まだ殆ど垂れ流しのようです。新幹線は最初から貯蔵式です。
 だから、昔のトイレには、「停車中はトイレを使用しないで下さい」とあった。
 今でも、トイレから下を見ると、線路の石が見えたのを覚えてます。
 まあ、色々ありましたが、それでも、やはり蒸気機関車は懐かしいです。
 汚い話、ごめんなさい。
 やはり、我ら男には、綺麗な女性の話が良いですね。



俳句


SLは 懐かしき日々 真っ黒け