上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

潤滑油

 古稀まで生きてきて、座右銘を問われれば、躊躇する事無く、「余裕」と答える。
 即ち、一番大切なものは、精神的な余裕を失わないという事。 
 我が人生を振り返れば、失敗するのは、いつも余裕を失った時であり、何事か、うまく行った時は、十分な余裕を持って行動した時であった。
 余裕は、言わば、脳の潤滑油かも知れない。
 潤滑油がなくなれば、間違いなく、どんな機械も故障する。
 もし、目の前で、カンカンに怒っている人が居れば、それが、即ち、余裕ゼロの状態です。まあ、こうなっては、何事も、うまく行く事は無いと思います。
 ええ、どんな話し合いも、取引も、うまく行く事は有り得ません。
 では、余裕とは何なのか。それは、のんびりしてる事とは、かなり違います。
 なかなか説明が難しいので、私の実例でお話しします。
 ある朝、教頭が校長室に、一大事とばかりに、駆け込んで来た。
 聞けば、例の男が、黒塗りの車で乗り込んで来たと言う。
 彼の娘は中学二年生、良い子なのだが、少し前から、周りの生徒と少しトラブルを起こしていた。 
 トラブルは、学校の対応が悪いからだと、以前から、文句の電話が来ていた。
 それで、とうとう、切れた男が怒鳴り込んで来たと言う訳である。 
 この男は、フィリピンパブの店を持っていた。フィリピンから、沢山、若い女の子を連れて来ては、自分の店で、接待やダンス等をさせていた。
 まあ、その筋ではないが、その筋に近い人である。教頭は、もう青くなって動転している。
 クラス担任ではなくて、私と直接、話をしたいとの事である。それなら、校長室に案内するよう、指示した。
 男はサングラスを掛けたまま、無言で校長室に入ってきた。
 会うのは、今日が初めてである。
 背は高くないが、横幅は、それなりにある。まあまあの威圧感も感じた。
 向き合うと、どうしても押し問答になってしまった。
 向こうは担任や主任、最後は、校長の対応が悪いと大声で罵り始めた。私も、こんなサングラスにすぐ負ける訳には行かないから、同じように言い返した。
 段々、険悪なモードになって来た。側に控えている教頭の顔は、もう、すっかり青ざめていた。
 このままでは、間違いなく、話は決裂、最悪の状態になりそうだった。
 そうなれば、車に乗って居る若い衆が乗り込んで来るかも知れない。
 内心、私は、もう、そうなったら、それでも構わないと思った。来た所で、すぐにナイフ等を持ち出すまでは行かないと踏んでいた。
 やがて、話は膠着状態になり、二人とも、黙ってしまった。
 正に、息詰まる瞬間である。
 ふと見ると、相手は、手で無意識にテーブルを音を立てずに叩いていた。それが、いつもの癖らしい。
 相手は、非常にイライラしている。すぐにも切れてしまうかも知れない。
 相手の様子を見て、逆に、私は余裕を失っている自分に、漸く、気付いた。
 これでは駄目だ。
 私は、一息入れて、余裕を取り戻した。戦術転換である。
「ところで、あんたの、その店だけど、どうなんだい、いい女は、いるかね」
 いきなり、違う方向から話が再開したから、相手は、ひどくビックリした。
「えっ? 女だって? そりゃ、いるさあ、いい女ばっかり選んで連れて来るんだから」
「で、歳は、どれ位なんだ」
「ここだけの話だけど、十八才以下のもいるよ。店に出す時は、20歳にしてるけどな」 
「ほう、良いねえ、そいつは素晴らしい店だ。じゃあ、今度、行くから、とびきりの女を俺に紹介してくれないか?」
「そうだな、うん、いいよ、校長さんなら、処女マンの、特別いい女を出すよ。フルコースまでOKにしてくよ」
 フルコースとは、何のことか、私は何も知らないが、此処は、躊躇無く、応じるに限る。
「よし、じゃあ、約束だ。行く時は、数日前に電話するよ」
 言うと同時に、私は手を出して、彼と握手をした。
 途端に、さっきまでの険悪ムードは、雲散霧消してしまった。
 その後、私も穏やかに話をし、彼も友好的になり、話し合いは、良い結論で終わった。
 これが、余裕である。
 一歩引いて、違う角度から構え直したのである。討論に夢中になりすぎてしまうのは駄目なのである。一歩引くのだ。
 後日、私は、約束を果たすために、繁華街にある、彼の店に行った。
 風俗店に、それほどの馴染みはないが、此処は、どうしても約束は守らなければならない。破ったら、それで人間関係は終わりである。
 ギラギラと派手なイルミネーションが点滅する店に入ると、中では、ブラジャーと極小パンツ姿の若い子達が、少し高いステージの上で、妙な形に体をくねらせて、懸命に踊りまくっていた。
 近くに居た黒服に、社長はいるか、と言うと、すぐに走って行った。  
 その後の事は、主題から外れてしまうので、省略します。
 さて、最近、新聞テレビなどで、身内の殺人事件などが、多く報じられている。
 こんな場合、当事者に、ほんの少しでも、余裕があったら、悲惨な事件にならずに済んだのにと、本当に残念な思いである。
 自殺だって、余裕を失ってるから、自殺してしまうのだと思う。そんな時は、一歩下がって、笑顔を取り戻してから、考えれば良いと思う。
 そう、余裕を取り戻すには、笑顔が一番効果的だ。
 余談だが、最近、笑う事は脳の健康に極めて良い事が、様々な研究で分かって来た。  
 諺として知られる、笑う門には福来たる、は嘘ではなかったようです。 
 と言う事で、今、猛烈に怒っている貴女。とにかく、まずは余裕を持ちましょう。
 今後は、怒る前に、笑顔で余裕を作りましょう。そうすれば、怒らなくても済むと思います。
 試しに、うんと笑いながら怒ってみて下さい。出来ないでしょう? 
 まだ説明不足かも知れないですが、記憶用のスローガンを幾つか。。
 余裕は脳の潤滑油。余裕は笑顔。余裕は一歩引く事。余裕はユーモア。余裕は客観視。余裕は対象に夢中になりすぎない事。余裕は別の視点から自分を見る事。 
 他にも沢山の実例があるが、長くなり過ぎたので、この辺で。




俳句


人生は 何事もまず 笑いましょ