上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

昼下がりの女

 現役の頃、ある時期から、私の執務室を訪れた女性がいた。
 大抵は、午後の昼下がり頃。とても美人の若い奥さん。
 白人風の顔で、マリリン・モンローに少し似てたから、私の好みにぴったりの女性だった。
 いつも、三歳位の子どもを連れていた。四月に、大阪の方から転勤してきたと言う。
 学校でPTAの会議などがあると、その帰りに寄る事が多かった。
 最初は、何の用で出来たのか、よく覚えていない。気付いた時には、もう親しく会話をしていたのだ。
 大阪の人だから、話していると、時々、聞き慣れぬ言葉を使った。
「おぼこい」と言ったのを今でも覚えている。子どもという意味らしい。 
 綺麗な若い女性と話をするのは楽しいから、来れば、いつも長話になった。 
 半年位経った、ある日。
「先生、今度、こんな会があるんですけど、一緒に行きませんか」 
 差し出したパンフレットを見ると、何か、偉い人が来て講演するらしい。
 講演内容は、人生関係の事、生き方のような事だった。 
 開催する日は、特に、用事は無かったので、内心、行くかなと思った。
 講演の帰りに、何処かレストランでも寄ろうか、と思った。
 美人の言う事には、大抵の男は無抵抗です。下心があるからです。
「分かりました。行きますよ」
「それなら、待ち合わせて、あたしの車で行きましょう」
 別々の車で行く方が、何かと自由で良いと思ったが、彼女がそう言うなら、一台の車で行くのも悪くない。
 それに、一台の車に乗れば、また、もっと親しくなるかも知れない。
 男の空想は、どんどん、広がっていく。
 数日後、出張から戻ると、執務室の机に、封筒が置いてあった。
 見ると、彼女からである。
 開けると、何か、会誌のようなものが出て来た。
 グラビアページを見ると、大きな大会の写真。でも、そこに居る参加者は、全員が何か白い服装をしていた。一寸、異様な感じ。何かが閃いた。
 急いで、その会誌を最後まで、ざっと読んだ。
 暫く、考えてから、彼女に連絡した。
「あのですね、都合で行けなくなりました。申し訳ないです」 
 以後、彼女が来ても、前ほどには、好意的な応対をしないようにした。
 一ヶ月ほどしたら、プツリと、彼女は来なくなった。思わず、ほっとした。
 その後、教材会社の社長と会った時、その話をしたら、即座に言った。  
「新興宗教か、何かの思想団体かな、まあ、そんな類のハニートラップでしょ、それは」
 そんなに強硬に勧める訳で無いから、つい、警戒せずに、引っかかってしまう。
 勧誘する方も、巧妙になってるのだなと感心した。
 それに、いよいよとなれば、あの女は、伝家の宝刀を抜いたのだろう。
 うーん、それを思うと、何か損した気がした。宝刀の味見をしてから、逃げれば良かった。ハニートラップに負けない作戦で行けば、美味しい食い逃げが出来たかも知れなかった。 
 いやいや、逃げられなくなって、洗脳される事になったかも知れない。
 早めに、逃げて正解だったのだ。
 それにしても、現代社会は、色んな落とし穴があるから、油断は禁物だ。
 騙されないコツは、美味しい話、自分に都合のいい話、うまい話には乗らない事だ。 
  


俳句


美人には 何の手も無し 馬鹿男