上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

永すぎた愛撫

 三島由紀夫に、永すぎた春と言う短編小説がある。
 恋人達が、何時までも恋人のままで付き合っていて、何時までも結婚に踏み切らない。
 やがて、当然の事だが、飽きて来て、喧嘩するようになり、最後は別れて行く、と言う物語である。
 何事にも飽きると言うのは、生命活動の中に賦与されている、生命維持のために不可欠のプログラムである。
 だから、どんな仲の良い恋人達でも、多少の年月が経てば、喧嘩別れする事になる。
 そんな時、一枚の紙切れ、婚姻届があれば、喧嘩しても、そうは簡単に喧嘩別れは出来ないし、また、そうしようとも思わなくなる。
 と言うのは、離婚には、色々と、想定外の面倒な手続きがあるし、今更、そんな面倒な事に、エネルギーは使いたくないので、離婚は、避ける事になるのだ。
 ところで、そう言った恋人関係から、結婚に進むのは、何処かに、その境目みたいなものがあるのだろうか。
 有るとすれば、それはどんな状況なのか。
 まあ、数学の公式ではないから、それは此処だ、と言うような、明確な線は引けないのは、当たり前だが、何かしら、境目みたいなものは無いのだろうか。
 もし、それがあれば、何時まで経っても境目に到達しないから、この人とは、もう結婚する事は無さそうだとか、境目が見えたから、もう少しで結婚になるとか、そう言う判断が出来るかも知れない。
 そうなれば、長すぎた春を避ける事が出来ようと言うものである。
 ここで、私的な話になるが、恋人時代は、逢えば、必ず、どっかにドライブしたり、ともかく、楽しい日々だった。
 そうして、何処かに行けば、その帰途、精一杯、豪華なレストランに寄るのが、いつもの事だった。
 ところが、二年くらい経った、ある日、一寸、様子が違った。
「アパートに帰って、何か食べれば、いいよ」と、彼女が言ったのだ。
 その言葉を聞いて、思わず、私は驚いた。
 と言うのも、その言葉が私の気持ちと、同じだったからである。
 実は、いよいよ、これから結婚して、一戸建ての家を借りるとなると、今後は、契約金などで金が掛かるなあと、少しずつ気になっていたのだ。
 出来れば、今後は、余り散財したくなかったのだ。
 恐らく、彼女も、段々、そんな気になっていたから、あの言葉が出たのだろう。
「そうだな、家でラーメンにしよう」と、私も同意。
 この時こそ、私達の恋人時代が終わりを告げた瞬間だった。
 即ち、この瞬間が境目だった。
 以後も、子どもが出来ない内は、よくドライブに出掛けたが、その帰り、豪華なレストランに寄る事は無く、精々のところ、地味なファミリーレストランだった。
 さて、恋人時代は、いくら親しいとは言え、まだ、それぞれ、独立した存在である。
 決して、相手と自分は、一体とは思ってない。
 それは、結婚していないのだから、当然の話である。
 だから、豪華なレストランに寄って、もし、男または女が金を出すなら、いくら費用が掛かろうが、全然、気にもならない。
 ところが、いよいよ本当に、この人と一緒に生活するのだと思うと、二人の心境は、大きく変化して来る。
 この人と、結婚して夫婦になるのだと思えば、お金も掛かるし、色々と大変だから、何時までも、浮ついた恋人気分では居られなくなるのは、当然の事だ。
 夫婦の場合、片方がお金を出しても、それは夫婦からの支出を意味する。
 出来れば、無駄遣いはしたくない。
 将来の結婚を意識した時から、即ち、二人の一体感が強まった時から、豪華なレストランは、縁が無くなるのである。
 当たり前だが、恋人時代と結婚生活は、まるで、違うものなのだ。
 いつまでも豪華なレストランであれば、それは、三島氏の小説と同じ結末が待ち構えている事だろう。
 境目のキーワードは、一体感と言う事だ。 
 さて、うんと昔だが、飲み屋で、もう相当に、私は酔っていたが、雰囲気に乗って、また酒を追加注文した。
 そしたら、馴染みの女の子が、一言。
「もう、止めましょ」
 飲み屋の側とすれば、一円でも多く売るのが目的だから、これは、変な話である。
 客が飲んでも飲まなくても、酒が売れて儲かれば、それで良い筈だ。
 何故、女の子は、そうしなかったのか。
 多分、その女の子は、好意故か、私と一体化して、思わず、飲み屋の店員である事を忘れてしまった。
 その結果、貧乏サラリーマンであった私の出費を心配し、つい、そんな言葉が出てしまったのだ。
 さて、楽しい恋人時代ですから、あちこち旅行したり、超豪華なレストランに行くのは、良い思い出にもなりますから、遠慮する事はないでしょう。
 でも、上に述べたように、それが、何時までも続くようだと、傍から見ていて、おい、大丈夫か、と、一寸、心配にもなります。
 えっ、貴女は、それを百も承知、遊びのつもりで付き合ってるから、どんどん、超豪華なレストランに連れて行ってもらうって?
 なるほどね、貴女自身の方が、一枚上手なんだ。
 それなら、うんと奢らせて、相手の男の全財産を空っぽにしてやりましょう。
 そうして、空っぽになったら、そのバカ男とバイバイする訳ですね。
 どうも、最近は、時代が変わったらしいな。
 心配すべきは、女の子でなくて、男の方みたいだな。
 世の男性諸君、何時までも、豪華レストランに行きたがる女には、注意しましょう。
 よって、以下の教訓となる。
 何時までも豪華レストランに行く恋人は、結婚に進む確率は、極めて低い。
 とは言え、これは数学の公式ではありませんので、常に真と言う訳ではないです。
 誤解無きように。念のため。


<あの、上州無線さん、僕の彼女は、いつも部屋で手料理を作ってくれるんですが、これは、どう解釈したら良いですか?>
<彼女の手料理で歓待されてると、大いに自慢したいようだが、違うね。君が若い女にモテる訳無いから、それはだな、沢山、塩の入った料理を食わせて、君を高血圧にして、保険金を取ろうとしている、としか解釈出来ないね>
<古稀になると、随分と僻みっぽくなりますね>
<疑るなら、ほら、試しに、この血圧計で測ってみな>
<あれっ、ほんとだ、200もある。あの、イカサマ女め!>
<安心していいよ、その血圧計は、故障品なんだ>



俳句


もう止めて 同じ愛撫で 飽き飽きよ