上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

YESTERDAY

 高校時代は、受験勉強をしなくてはならなかったから、好きなアマチュア無線も出来なかった。
 それで、気分転換は、専ら、街の映画館で外映を見ることであった。
 本当は、勿論、電気工作をしたかったのだが、工作は、手間も時間もかかるから、勉強時間を確保出来なくなってしまう。
 その点、映画ならば、見終わって、映画館の外に出れば、それでお終いである。
 記憶に残っている映画は沢山あるが、「風と共に去りぬ」を見た時、館内に沢山の女子高生がいた。
 暫く見ていると、その内に、彼女たちの笑いのタイミングと、私の、それが、微妙に異なっていることに気付いた。
 少しも面白くも無い場面なのに、女子高生の笑い声が、何度も館内に響いたものだ。
 どうして、こんな場面で、笑うのだろうか。何で笑うのか。 
 男と女の感性の違いを、その時、初めて知った。
 だから、この映画を思い出すと、ビビアン・リーの美しさよりも、あの女子高生達の不可解な笑いが、どうしても脳裏に浮かんで来てしまう。
 やはり、男と女は別の生き物なんですね。
 当時は、二本立てとか、三本立てがあったから、色んな映画を見ることが出来た。
 西部劇は、ジョン・ウェインが活躍してました。
 でも、一番印象に残っているのは、「荒野の決闘」。
 原題は、My Darling Clementine。
 いわゆる典型的な西部劇で、中身は単純ストーリーですが、モニュメント・バレーの大自然を背景に繰り広げられる、微かな恋愛物語は、高校生の私に深い感動をもたらしてくれました。 
 特に、クレメンタイン役の素敵な女優、キャシー・ダウンズと、ワイアットアープ役のヘンリー・フォンダが、最後に、別れる場面は、万感、胸に迫るものがありました。
 二人が立っている、その向こうには、何処までも続く西部の大平原、モニュメント・バレーに点在する、メサ(テーブル状台地)と、ビュート(侵食が進んだ岩山)が見えて、如何にも西部劇らしかったです。
 この主題曲、日本では妙な歌詞を当てられてしまいましたが、私は好きで無いです。
 アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」を見たのも、この頃だったと思います。
 あの映画音楽は、当時、好きな女の子がいたので、心に染み込んで来ました。
 今でも、あの音楽が流れると、切ない青春を思い出します。
 誰でもそうだと思いますが、昔、見た映画を思い出すと、その当時の自分が鮮明に蘇って来ます。
 でも、大学に入ってからは、もう映画館に行った記憶は無いです。
 もう、アマチュア無線に没頭出来るようになりましたから、無線機の製作に夢中になり、自然と映画館から、足が遠のきました。
 それと、この頃は、もうテレビが普及するようになって、我が前橋も、映画館がどんどん閉鎖となりましたので、結局、映画館には、大学卒業以来、一度も行ったことが無いです。
 ですから、現在、前橋市に、どの位、映画館があるのかどうか、それも知りません。
 さて、45歳位の時、ビデオで、 「カサブランカ」(英語: Casablanca)を見ました。 
 1942年製作のアメリカ映画ですが、これは、また名作中の名作だと思います。
 ストーリーは、これも単純です。
 まあ、恋愛映画ですから、男と女の物語です。
 要するに、男が、恋人を、自由と言う大義のために、自由戦士ラズロに譲る訳です。
 こんな事は、普通の男なら有り得ませんね。
 でも、その有り得ないことをするので、物語になってる訳です。
 よく考えれば、現実には、在りもしないの男の話ですが、映画を見てる間は、そんな矛盾を少しも感じさせません。 
 初めて見た時は、ただ、ただ感動したものです。
 私にも、好きな女の子がいて、その周りにライバルらしき男が居たことがありましたが、とても、女の子を譲ろうなんて気には、死んでも成れませんでした。
 それが雄の基本姿勢だと思います。
 「いいですよ、私の女、君にあげますよ」、何て言っていたら、自分の子孫は残せませんからね。
 自分の欲望を抑えて、自由という大義のために、自らを処す、本当に格好良いですが、私には、いや、殆どの男には出来ないことだと思います。
 その出来ないことをした男の物語なので、今以て、人気があるんでしょうね。
 基本的に、不可能なことに、人間は憧れますから。
 それと、ヒロインのイルザですが、この女性の主体性が無いのは、些か呆れます。
 本当は、どちらの男が好きなのか、全く分かりません。
 やはり、ここは、自分の意見を言って、好きな男の側に付くべきでしょう。
 自由なんてものよりも、好きな男を選ぶべきです。
 自分の意見を言わない女は、唯のお人形さんです。
 自分の思想が無い女は、男から見れば、唯のダッチワイフだと思います。
 と言う事で、私の好きな女性像は、黙って微笑んでいる大和撫子よりも、「風と共に去りぬ」のヒロイン、苦悩しながらも自らの人生に挑戦する、気の強いスカーレット・オハラです。
 さて、カサブランカには、幾つもの名台詞があります。
 よく紹介されるのが、「Here's looking at you, kid.」(君の瞳に乾杯)ですが、私は、そんなに良いとは感じません。
 それよりも、リックと愛人イヴォンヌとの会話の方が洒落ています。これも、よく引用されますね。
Where were you last night? (昨夜はどこに居たの?)
That's so long ago, I don't remember. (そんな昔のことは思い出せない)
Will I see you tonight? (今晩、逢える?)
I never make plans that far ahead. (そんな先の予定は作らない)
 リックみたいに持てる男ならではの台詞ですね。
 一度位、この台詞、真似して言って見たかったのですが、残念ながら、我が人生、この台詞の出番はありませんでした。
 美しい女が来れば、いつも、大歓迎した私でしたから、追い払うなんて事は、勿体なくて、出来なかったです。 
 ところで、私の葬式ですが、カーペンターズのYESTERDAY ONCE MOREを掛けてもらいたいです。  
 その曲を聴きながら、あの世に旅立ちたいと思います。
 ええ、この曲にも、忘れられない思い出があるんです。
 その時の喪主は、老妻なので、もしかすると、間違って、ビートルズのYESTERDAYを掛けてしまうかも知れません。
 そうすると、ビートルズのYESTERDAYは、ひどく陰気で悲しすぎるので、とても死ぬ気には成れませんね。
 仕方ない、その時は、棺から立ち上がって、笑顔で老妻にVサインでもしようかと思います。
「あのさあ、曲が間違ってるよ。カーペンターズだよ」
 老妻のミスを責めても仕方ないです。毎日のことですから。




俳句


思い出は 映画の中に 今も在り