上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

レストラン

 あれは大学三年の秋頃だったと思う。
 夜、ヨーロッパと交信していたら、青井から電話が来た。
 明日、女三人と会うから、一緒に来ないかという。交信中だったので、一応、行くと返事した。
 翌日の夕方、青井の家に行った。彼の部屋は、煙草店の横を通るしか、他に道は無かった。
 行くと、丁度、客が来ていた。
「じゃあ、先に行ってるよ」
 部屋に入ると、書きかけの絵がイーゼルに掛かっていた。
 また、違う女を呼んだのだろう。なかなかスタイルのいい女だ。描いてはヤリ、ヤッて描いているのだろう。それはプロもアマチュアも同じだ。
 部屋には、他にも描きかけの絵が置いてある。絵は好きらしいが、でも、売れる画家になるには大変なことだろう。
「よお、待たせてご免」 
 日本のエルビス・プレスリーがやって来た。
 先日、あるブログで、プレスリーを久し振りに見たが、青井と雰囲気がよく似ているなあ、と改めて思った。
 色の黒さ、如何にもセックス好きな瞳、精力絶倫を思わせる口は、やはり、持って生まれたものだろう。
 プレスリーはトラックの運転手だったから、歌手になる前は、恐らく、青井と似たような日々を送っていたのでは無いだろうか。
「女は三人だ、伊勢崎まで電車で行くよ。すぐ股開く女ばかりだから、口説く必要は無いよ」
 女が二人なら分かるが、女は三人だ。どうやるんだ? 
「適当にやるんだ、要するに、乱交みたいなもんさ」
 それは、乱交みたいなものでは無くて、乱交、そのものだろうに。
 聞いて少し腰が引けたが、そこは、性欲全盛時代の私が、居ました。
 まあ、一度位は、何でも経験する事だ、と、直ぐに正当化しました。
 まずは、伊勢崎まで電車です。駅で、ドリンク剤を買いました。
 まあ、二人とも歳が歳ですから、ドリンク剤なんか、全く関係ないのですが、気分の問題です。
 伊勢崎に着くと、駅から狭い路地をあちこち曲がって、汚いレストランに着きました。
 場末の潰れそうなレストランです。
 そこに、女三人が待っていると言うのです。
 まあ、どんな女が来ても、セックス位はできるから、何も心配することは無いと思いました。でも、会うまでは、やはり、多少の不安はありました。
 引き戸を開けると、女達は、もうテーブルを囲んで座っていました。
 正しく三人居ました。
 見た瞬間、どの顔も、絶望的でした。
 一人は普通の身長、二人は小さかった。小さい方の一人が相撲取り。
 途端に、拒否反応で血の気が引きました。
 多少の不器量は、我慢できますが、少しひどすぎました。
 でも、性格がよければと、少し希望を持つように努力しました。
 性格がよければ、行き当たりのセックスですから、何とか大丈夫でしょう。
 さて、夕食が運ばれてきましたが、どれも、不味そうなものばかり。
 汚いレストランらしい料理でした。
 最初は、挨拶して、少し話をしました。私は学生、青井は社長です。
「此処で、食べたら、近くのホテルに行くから」
 青井が素早く囁きました。
 そう言うことか。でも、どうするかなあ。もう、私は迷いだしていました。
 と言うのも、彼女たちは食べながら、既に、卑猥な言葉を発していたからです。
「早く男を食べたいなあ」
「おめえ、ガッつくんじゃねえよ」
 女が、こう言う乱暴な言葉でエロ話をするのは、全く頂けません。
 いや、しても構いませんが、上品にやってもらいたいです。
 いつだって、女は男の憧れの対象なんですから、それをぶち壊すのは良くないです。
 ひどい顔が、ますます低脳に見えて来ました。
 最初は、少し彼女たちと話をしていましたが、やがて、私は、口も利きたくなくなりました。
 なので、黙って食べてばかり居ました。不味い料理ですが、他に時間潰しが無かったですから。
 青井は、適当にエロ話を受け流していました。バカ女達は、とにかく、元気でした。
 それにしても、事前に写真位見てから、来れば良かったと後悔しました。
 青井は、普段、女の趣味は悪くないのですが、要するに、セックス専門の時は、顔とかスタイルは、一切、気にしないのです。 
 やれれば良いんです。穴があれば、それで十分。
 青井とは、共通の部分もありましたが、どうしても異質の部分もありました。
 一時間位したら、女達が不機嫌になって来ました。
 私が、一言も話に乗って来ないからです。
 青井は、私の顔を見て、何とかしろよ、みたいな顔を何度もしました。
 しかし、私も、一度、気に食わなくなると、もう誰の言う事も聞かなくなります。
 とうとう、私は、青井に、ノーのサインを送りました。行かないという意味です。
 この女達とやるのなら、本当の豚とやった方が、まだ、マシだと思いました。
「じゃあ、悪いけどさ、今日は、これで帰ることにするよ」
 青井がそう言うと、女達も雰囲気で、既に事態を察知していましたから、黙って同意しました。
 でも、怒りの矛先は、当然、私です。
 女達の怒りは頂点に達していたことでしょう。セックスできなくなったのですから。
 あの時、もし、私が弱々しそうな、体格貧弱の男だったら、女達は、私に飛びかかって来たかも知れませんね。 
 どっこい、目の前には、青井よりも肩幅のでかい男が居ました。
 女達は、私を睨むだけで何も出来ません。
 別れ際、背の高い女が、一言、言いました。
「あんたが、一番、口に入れたよね、何にも話はしなかったけどさ」
 精一杯の皮肉でした。まあ、黙って食べてたから、一番大量に食べたのは間違いないです。
 今思うと、性欲全盛時代の私でしたが、それでも、雄としての選択意識はあったのですね。
 若かったですから、当時は、その機会さえあれば、どんな女とでもヤリたいと思っていましたが、いざ、その現実と向き合うと、そうではありませんでした。
 でも、もし、女のメンバー全員が普通程度の顔で、かつ、心の波長が合えば、若い私でしたから、乱交パーティを間違いなく、経験してたと思います。
 その後、半月位、逢う度に、青井は、ブツブツ言っていたものです。
 さて、歴史書に依れば、原始の時代は乱交だった、なんて話がありますが、それは嘘だと思います。
 男だって、嫌な女とはセックスする気にならないです。
 乱交だから、どの女とも、自由にセックスできると言うのは、男をワクワクさせる、作り話の「お話」ですね。
 いくら乱交でも、嫌いなタイプの女、または、フィーリングの合わない女が居れば、その女とは、セックスしたくないです。
 女性も、同じ事だと思います。
 ライオンの雌だって、嫌な雄が来ると、逃げてますよね。
 自然界の雄と雌は、あるレベルで、本能的に相手を選択する仕組みを持っていると思われます。
 さて、暫くぶりに、青井の思い出を書きました。
 40歳になる前に、青井は自殺したらしいのですが、私は、それを友人から聞いたのみで、何処で、どんな風にの詳細は知りません。
 早過ぎる死でした。もっと、生きていて欲しかったです。
 自殺の理由は、容易に推察出来ました。それは、また、書く機会があれば、書いてみたいと思います。
 まあ、ひどく変わった男でしたが、決して、悪人では無かったですから、何時までも、儚い青春時代の象徴として、私の心の中に生き続けています。 
 そう言えば、本家のエルビスも42歳の若さで亡くなったのですね。




俳句


男にも 選ぶ意識は あるものだ