上州随筆俳句

 長くアマ無線をやってきましたが、一昨年、電信愛好家のためにパソコンによる電信自動送信装置「CWBOARDKK」を作りました。
 本ブログには、アマ無線の活動及び古稀世代の色々な方面について、感じたままの随筆と俳句が書いてあります。
 

何でも一番

 今日は、「老妻の日」である。
 何時、そんな日が制定されたかって?
 いや、私が制定しただけですので、余り、お気になさいませんように。
 7時半頃、老妻はライトブルーの運動着に着替えて、颯爽と出掛けていきました。
 不思議なもので、ジャージに着替えると、古稀直前の老妻が若返って見えます。また、脚も普段とは違って、昔のように長く見えます。
 それと、いつの間にか、自然消滅した、あの括れさえも、どことなく復活して見えます。勿論、それは単なる錯覚に決まってますが。
 要するに、何であれ、若い頃に鍛えたものは、貴重な財産になるようです。私の肩幅も、その財産です。ああ、アマ無線の電信も財産かも知れない。 
 さて、老妻の行く先ですが、我が家から、1キロ位離れた、400トラックがある、大きなグラウンドです。
 今日は、そこで、15の自治会が集まって、秋の総合運動会が行われるのです。 
 近隣から大勢の人が集まりますが、最近は、老齢の方が、うんと増えて来たようです。
 元陸上選手の老妻は、地区期待のホープなので、毎年、出場依頼が来ます。
 若い時は、リレーのアンカーを頼まれましたが、最近は、さすがに、それは止めて、スプーンレースや、玉入れなどに出ています。
 また、地区でやる、朝のラジオ体操も、講師を頼まれて、毎年、やっています。
 ラジオ体操を、未だに、最初から最後まで正確に覚えているのは、すごい事です。
 やはり、体育教員であった事は、事実のようです。
 私は、もうラジオ体操は、初めの所だけです、覚えているのは。
 さて、元陸上選手は、競争と名のつくものは、何でも大好きです。
 ですから、自分の地区の種目別記録を、毎年、メモ用紙に残しています。
 その中で、ひどく順位が悪いのがあると、我が事のように、何日も悔しがり、私に報告します。ずっと前、長く団長で活躍してた名残でしょうか。
 私は、そんな順位に、何の興味もありません。
 ですが、一応、聞いてる振りはします。それは、長い間の共同生活の結果、自然と身についた、賢い習慣です。
 ところで、陸上競技などに参加する人達は、元々、競争意識が、かなり強いようです。
 まあ、そうで無ければ、歯を食いしばって、単調な動作の繰り返しで、長いトラックを最後まで走る気にならないでしょう。
 ですから、老妻と東京に行って、電車に乗る時、或いは、何かの列に並ぶ時、老妻は、突然、豹変し、人を押しのけて、ダッシュします。
 そんな場面になると、やはり、元陸上選手の秘められた競争本能が、突如として、目を覚ますようです。
 いい年をした老婆がダッシュするのは、見ていて、大いに恥ずかしくなります。
 さて、うまく列の先頭の方に割り込むと、してやったりと、手を上げて、早く早くと、衆人環視の中、私を招きます。
 すると、何事かと、周りの人の視線が、一斉に私へと注がれます。
 その時、私に出来る事は、ただ、ひたすら、必死に無関係者の振りをするだけです。
 何時になっても直らない困った習性です。
 もう十分老婆なのに、まるで、若い娘のような振る舞いです。 
 とにかく、何でも、人より先頭に立つ。何でも人より早く終わる。それのみが頭にあるようです。
 勿論、その特性が、いい時もあります。旅行に行く身支度などは、数日前に済んでいます。私は前日、やっとの事で、準備が終わります。
 でも、人生のゴールにだけは、私よりも先に行かない事を、切に期待しています。
 と言うのも、我が父は、母に先立たれ、約10年間の孤独生活をしました。
「一人はつまらないよ。ほんとにつまらないよ」
 偶に、尋ねていくと、父は、そればかり言っていました。
 その通りでしょうね。老人の孤独位、つまらないものは無いでしょう。
 幸いな事に、老妻は鋼鉄のように丈夫なので、私自身は、父のような孤独生活を送る事は無いと、安心しています。
 とは言え、老妻も生身の人間、大事にしないと長持ちはしないでしょう。
 なので、退職してからは、皿洗いや炊飯、掃除も私がやってます。また、買い物に行けば、軽重にかかわらず、荷物は、必ず、私が持ちます。
 思えば、若い時には、なーんにもしなかった私、でした。
 この変化には、私自身も驚いております。
 夫婦は歳を取るにつれて、親愛の情が深まると言われておりますが、やはり、そう言うことなんですね。



俳句


秋の日や 運動会の 音来る